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高森明勅
2019.3.30 07:00皇室

「皇位の安定継承」を巡る政府見解

皇位の安定的な継承について政府はどのように考えているのか。
去る3月20日の参院財政金融委員会での安倍首相の答弁に、
それが明確に示されていた。
当日の速記録(未定稿)から紹介する。

「安定的な皇位の継承を維持することは
国家の基本に係る極めて重大な問題である」

「男系継承が古来例外なく維持されてきたことの
重みなどを踏まえながら、慎重かつ丁寧に検討を行う必要がある」

「旧宮家の皇籍復帰等々を含めた様々な議論があることは
承知しておりますが…国民のコンセンサスを得ることも必要であり、
十分な分析、検討と慎重な手続が必要である」

ここで注意すべきは、
一先ず“男系継承の重み”を強調しながらも、
それをストレートに制度化するという話にはならず、
「慎重かつ丁寧に検討を行う」として、
女性天皇や女系継承の可能性を排除するとは、
一言も述べて“いない”点だ。

更に旧宮家案については、
「国民のコンセンサスを得ることも必要」と
“慎重な”姿勢を見せている。

こうしたスタンスが基本にあるから、
「(11宮家の皇籍離脱という)GHQの決定を覆す
ということは“全く”考えていない」とか、
「皇籍の復帰では“なくて”皇位の継承について
そういう考えで進めてまいりたい」
といった発言に繋がっていると理解できる。

これらに、3月18日の参院予算委員会での、菅官房長官の

「皇族数の減少等については、皇族方のご年齢からしても
先延ばしすることはできない重要な課題である」

という発言を付け加えると、
この問題を巡る政府見解のほぼ全体をカバーできるだろう。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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